女総長、いざ参らん!

拾漆 嵐の前




──────────


夕餉の時間、賑やかな食堂の端に座る私と沖田、三馬鹿がいる。


私はじっと出された者を見つめた。



沖「どうかしました?」


裕「あの、今日の献立ってすき焼きじゃないんですか?」


平「何言ってんだよ、裕紀。目の前にあんじゃん、すきやき!」


裕「……(なんか違う!!)」


どうやら未来のすき焼きとこの時代のすき焼きは別物らしい。


今、私の前にあるすきやきは鍋料理ではなく恐らく焼きもの。


材料は野菜と肉があって、肉は、これは、…鯨?



新「どうした?食べないのか?」



私が凝視していると、その言葉と一緒に新八の箸がそろりとのびてくる。


それを傍目で捉えれば、手刀を食らわせた。

新八が勢いで転がった箸に気を取られている隙に逆に私が新八の皿から肉をとってやった。



裕「まだまだだね、新八さん?」


平「凄え既視感あるんだけど…」



隣で苦笑する平助を他所に悔しそうな新八にドヤ顔を御見舞し、ぱくりと取ってやった肉を口に入れる。




裕「ん!美味しい!」


左「お前、すきやき食べたこと無かったのか?」


裕「これはね。わた…、俺の知ってるすき焼きはこうゆうのじゃないんだ。」


左「へえ、どんなの?」


裕「んっとねー、…あ。牛鍋って分かる?あれと似たようなのなんだけど」


沖・平「牛鍋?」


新「ああ、知ってんぜ。牛の肉を食べるんだろ?」


裕「そう、それ。私の居た所ではすごい有名で人気な料理だったよ」



すき焼きがこの時代になかったのは驚いたが、確かに明治になるまで牛肉や豚肉を食べる習慣はなかったと授業で聞いたのを思い出した。


牛鍋も明治頃に流行ったらしいし、新八以外のみんなが知らなくても無理ないのかもしれない。


…多分だけど。



平「あ、そうだ。総司、裕紀。この後の見廻りなんだけど鈴木が体調崩して行けないみたいで代わりに俺が行くから。よろしくな!」


裕・沖「「了解」」



鈴木…、鈴木三樹三郎か。


全然話したことないからどんな人か知らないけど、そんな人とよりも平助とで良かった。


こうゆう時、私は試衛館組以外であまり人脈がないんだと身にしみて感じる。

同じ隊でも気楽に話せるのは山野くらいだし。


私から見ても幹部の中でもそのグループは特別に映る。

やっぱり、昔からの仲というのは何処か切っても切り離せない部分があるのだろう。


そんなことを考えたら少し、本当に少しだけ、未来にいるみんなが恋しくなった。


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