苦難を乗り越えて
別れがきて出会いがくる
お父さんの家…。アパートには早紀の小さい頃の写真と早紀より若い男の子が制服を着ている写真が飾られていた。早紀宛ての手紙と、たかしへ、と書いてある手紙が何百枚と置いてある。送ろうと思ったけど、送れなかったんだと思う。手紙には必ず、すまないと書いてある。最後に書いたと思われる早紀宛ての手紙には、お父さんが死んだら…と遺書が残されていた。多分、自分がガンだとゆうことを知っていたのだろう。ろくに仕事もしていなかったみたいだし、お金もなかっただろう。けど早紀のために貯金をしていてくれた。お母さんと離婚してから、月々三千円ずつ。少ない額だけど、何十年も貯めていてくれた。お父さんの気持ちがすごく伝わった。お父さんはお母さんと離婚してから一ヶ月後に別の女性と再婚した。三年後また離婚して、それからはずっと一人で暮らし、簡単なアルバイトのようなものをして毎日飲み歩いていたみたいだ。いい思い出なんてあまりないけど、お父さんなりに頑張って愛をくれてたんだと手紙を読んで早紀は感じた。お父さんの家で手紙を読んでいると、玄関のドアが開いた。知らない男の子。「誰?」お互い話しを聞く。その男の子は、たかしとゆうお父さんの再婚相手との間にできた子供だった。弟なんだ。不思議な気持ちと嬉しさが交わる中、ご飯に誘った早紀。若いから何食べてるのかわからなくて戸惑う。弟の、たかしはパスタがいいと言って近くのお店に入った。八歳下の弟。「何を話せばいいのかな」早紀はお姉さんだからと気を使って話しを始めようとした。「今、思ってること話せばいいんじゃない?」弟の大人な返答。「腹違いだけど、自分にお姉さんがいたなんて信じられないな」早紀も同じく信じられなかった。「せっかく会えたんだからこれから仲良くしよ?」と早紀は言ってみた。「見た目悪くないし、別にいいよ」弟の言葉は可愛くもなんともない。今の若い人は気を使わないのかと、おばさんくさく思ってしまう早紀だった。お父さんの話しは、二人共思い出がないからか、あまり出てこなかった。「お母さん、どんな人?」無神経だったかもしれないが聞いてしまった早紀。「死んだ。今は小言がうるさい、じいちゃんちに住んでる」弟は気にせず、そういった。この子は早紀より辛い思いしてきたんじゃないかと、胸を傷めた。電話番号を交換して別れ、早紀はタケ君に弟の話しをした。
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