いろはにほへと
じぃっと彼女を見ていても、何の返事もなければ、変化もない。



強引に居座った男が相手だから、やっぱり警戒しているのだろうか。



無理もないか。



でもなぁ。



「ねぇー。何て呼べばいい?何て名前なの?ねぇ。俺のことはトモハルでいいから。教えて。」




俺はちょっと興味があるんだよね。




しつこくしつこく、自分でもさすがにって思う位訊ねると、やっと彼女が名前を教えてくれた。





「…なの、です」





ん?




小さい声な上に、蝉のせいでよく聞こえない。





「えー???」





俺は立ち上がって彼女に近づく。





「だから、ひなのって…」




「ひなの!かぁ!」





かわいいじゃん。






俺が近づいたことに気付かなかったのか、ひなのの身体がびくっと震えた。





「あはは!ごめん、驚かせちゃった?」




少しからかってみるけど、ひなのはまた黙り込んで作業に取り掛かる。

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