いろはにほへと
「心臓が病気みたいに早くなったり、その人を見ると胸が苦しくなったり、…こう冷静に物事を考えられないと言いますか…そういう普段とペースが変わるっていうのが…耐えられないんです。だから―この一週間の撮影で終わらせられたら、と漠然とは考えていたんですが―」
「じゃ、訊くけど」
懸命に説明していた私は口を噤んだ。
桂馬は相も変わらず、目だけ覗かせている。
「その恋はいつから始まったの?」
「いつ―?」
問われて、はたと考える。
果たしていつから、だったろう。
トモハルが冗談で教えるといった恋。
自覚したのは居なくなってから。
けれど、自覚する前から、兆候はあったような気がする。
だが。
「…明確には、、わかりません。」
やっぱり覚えていない。
素直に言うと、桂馬は頷いた。
「だろ?それ位気付かない内に始まったんだから、終わる時も気付かないと考えるのが妥当じゃない?」
………
……
そうか。
目から鱗。