いろはにほへと

でも、今思えば。


あのまま、かっさらって、どこか遠くへ逃げてしまえばよかった。


それでも、俺にそんな勇気はなくて。

全てを捨てて、なんて格好良い台詞は、俺には吐けない。

全部真っ白にできるほど、自分は、強くない。

そして、ひなのが俺を好きなのかどうかも、わからない。




結局、去年の夏と同じ。


いずれ辿り着くゴールはとっくに見えてるんだ。


でもそこに行きたくないから、時間稼ぎをして、遠回りしてるだけで。


ひと夏の思い出を、思い出のままにできなかった馬鹿な俺が、きちんと思い出に封じ込めれるように。



失敗は許されなかった。


全部。


全部が、終わったら、今度こそ、二度と会わないと、覚悟しなければいけない。



いつか、この想いを忘れる日がくることも、痛みが薄らぐことも。



ひなのより10年も長く生きてりゃ、わかってるから。


< 306 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop