いろはにほへと
でも、今思えば。
あのまま、かっさらって、どこか遠くへ逃げてしまえばよかった。
それでも、俺にそんな勇気はなくて。
全てを捨てて、なんて格好良い台詞は、俺には吐けない。
全部真っ白にできるほど、自分は、強くない。
そして、ひなのが俺を好きなのかどうかも、わからない。
結局、去年の夏と同じ。
いずれ辿り着くゴールはとっくに見えてるんだ。
でもそこに行きたくないから、時間稼ぎをして、遠回りしてるだけで。
ひと夏の思い出を、思い出のままにできなかった馬鹿な俺が、きちんと思い出に封じ込めれるように。
失敗は許されなかった。
全部。
全部が、終わったら、今度こそ、二度と会わないと、覚悟しなければいけない。
いつか、この想いを忘れる日がくることも、痛みが薄らぐことも。
ひなのより10年も長く生きてりゃ、わかってるから。