いろはにほへと
カタタン…タタン…

満員電車一歩手前の混み具合。

本当は窓際に寄りたかったけれど、乗り降りする人の邪魔になるから、中腹まで行って、吊り革につかまった。

ブラインドが下ろされた窓。風景が何も見えず、残念な気持ちになる。


必然的に思考は彷徨い、澤田の家に泊まった日まで、遡っていた。


ー澤田さん…


彼女には感謝してもしきれない。

連れて行ってもらった澤田の家はマンションの3階で、両親はどちらも不在だった。共働きで帰りはいつも午前様らしい。代わりに中学生の妹が居て、やはり塾に通っていて、私達より少し前に帰宅したばかりだった。泣き腫らした私の顔を見て、ぎょっとしたようだったけれど、挨拶を済ませると気を利かせて、直ぐ自室に入ってくれた。



澤田の部屋で、私が、今までのことを洗いざらい話しても、彼女は怒らず、そして疑わなかった。

いや、やっぱり怒った。

私じゃなくて、トモハルに対して。
< 367 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop