いろはにほへと
「最後ねぇ…街中でも流れてんじゃん。観る機会いっぱいあったろ。」


「る、ルーチェ禁止なので…」


「禁止…」


私の言葉尻を繰り返した桂馬は、意味を理解したように、ふ、と短く息を吐いた。


「…ハルもこなかったんだよ。試写会。」


桂馬の口からトモハルの話題が出た途端、ドク、と心臓が鳴った。


「あの後…もしかしてなんかあった?」


「………」


あった。


いっぱいあったけど、言える訳ない。


私は手をぎゅっと握りしめ、地面に目を落とした。


「言えないようなこと。ってワケ?」


「!そんなんじゃ、、ないですけど…」


暫くの沈黙。


「言えばいいのに。無理矢理キスされましたって。」


「!?!?」


ーなんで。

弾かれたように顔を上げると、桂馬が真っ直ぐ私を見下ろしていた。


「なんで知ってるかって?俺があの人だったらそうしてたから。」


身体中が熱い。

あの日の事、瞬間、思い出すだけで、全身の血が燃えてるみたいだ。





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