冷たい手
ダイチは考えるのをやめ、車の後部ドアを開いた。
彼女は毛布に、猫のように包まって寝ていた。
乱雑に投げられた服。裾が汚れていることに気づいた。
しかし、あの雨の中、転んだのだろうと思った。
実際のことをダイチは知るよしもない。
毛布にくるまった彼女をよくみる。
目もとに、涙の筋があった。

そして、毛布から唯一出ていた左手に、すり傷を見つけた。
大地は、彼女の息が少し荒いことにも気がついた。

手を彼女のおでこにあてる。自分と比べると、間違い無く熱い。
彼女の目から涙がこぼれた。
ダイチは、何か胸の奥が熱くなる感じがした。もう、聞かずにはいられない。明日彼女の目が冷めたら、なぜ雨の中にいたのかを聞こう。
そう決意し、ダイチは家の中へ入っていった。
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