現実は小説よりきなり
今日のメニューはと言うと。
和食が西京焼きとほうれん草のおひたし、それとアサリの味噌汁に茄子の漬物とひじきの煮物。
洋食がアップル食パンとスクランブルエッグ、それとミネストローネにウインナーとサラダ。
どっちの気分かな?
メニュー表を見ながら考える。
その間にも列は動いていく。
「おはよう、嵐ちゃん。今日は何にする?」
食堂のおばさんに声をかけられた。
ふくよかな体型のとても優しい顔つきのおばさんで、寮の皆のお母さん的存在だ。
名前を藤沢好子(フジサワヨシコ)、通称藤さん。
「おはよう、藤さん。今日は西京焼きが食べたいから和食にする」
ニコッと笑って挨拶を返す。
「はいよ。じゃあ、そこにIDかざしといてよ」
「了解です」
藤さんの指差す先のIDリーダーに胸ポケットから取り出した生徒手帳をかざす。
ピピピと鳴って認証された。
トレーを手にカウンターを移動していく。
次々とカウンター越しに料理がトレーに置かれてく。
美味しそうな匂いがよりいっそう漂ってきて、空腹のお腹がグゥッと鳴った。
トレーに料理が全て並ぶとカウンターの一番端に置いてあるお箸とお茶を取って席に移動すれば食事を開始できる。
両手でしっかりとトレーを持って歩こうとした時だった。
「私が持ってくよ」
その声と同時に私のトレーは前から伸びてきた白い手に支えられた。
「えっ?」
と驚いて顔を上げたら、そこにはギャル。
はぁ?どういう事...。
意味が分からずに首を傾げた。
「昨日、足を捻挫してたんだってね。ほんとごめんね」
派手派手な化粧の彼女は申し訳なさそうに眉を下げる。
普段の威圧的な感じは微塵もない。
「...あ..昨日の?」
階段で私にぶつかった女の子?
「気付いてくれた?そう、私がぶつかったの。私、井上美樹。足が治るまで色々手伝うよ」
「...あ、いや...」
それは困る。
派手なギャルの井上さんが側に居るのは非常に不味い。
悪目立ちするの間違いないじゃん。
それは私は望んでない事だし。
って言うか、古沢君、どうして井上さんに言ったのよ!
ありがた迷惑だよぉ。