幼き日の約束
1
インターフォンがなった。

ドアを開けてみると、
そこにいたのはあの男だった。

「昨夜はどうもありがとう」

深々と頭を下げながら、
男は礼を言った。

「俺、近くに住んでるんだ。
よろしくな」

笑いかけてくるその表情には
昨夜とは全然ちがう明るさがある。

「少しでもいいから、君と話したくて」

そう言うと男は歩き出した。


「安心して。別に怪しい者じゃないよ」

一瞬どきっとした。

私が怪しんでいたのを
見透かされたかのように言われたからだ。

でも、どう考えてもおかしいのだ。

この男と会ったのは昨夜。

しかも名前も歳も何も知らない。

そんな男と、今隣で歩いているのだ。

だいたい出会い方だって…
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