心を全部奪って
「好き、ねぇ…」


ため息混じりに、ボソッと呟く霧島さん。


「じゃあ、聞くけどさ。

あの人のどこが好きなわけ?」


「え…?」


「確かに顔はすげーカッコイイよ。

間違いなく社内一だと思うよ。

それは認める。

でも、あんたイケメンばかりと付き合ってたワケじゃないんだろう?

じゃあ何が良くて、工藤課長と付き合ってるんだよ」


「それは…」


多分、理由は一つしかない。


「優しいから……」


私の言った言葉に、霧島さんの顔が微妙に歪む。


「ちょっと、それ貸せ」


そう言って私が持っていたマグカップを取り上げて、目の前のテーブルに置く霧島さん。


そして彼は、私がいる方に身体を向けた。



「優しいって、何?」



「え…?」



「あんたの言う優しいって、



一体



どういうもの?」

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