心を全部奪って
5月の最終日。


今日は締めの関係もあって、経理部は大忙し。


美帆ちゃんも例に漏れず、お昼休みもデスクで仕事をしている。


こんな日は仕方なく、一人で社員食堂に向かう。


窓に向いたカウンターテーブル。


一人で食事をする人にはピッタリの席だ。


スマホをいじりながらワンプレートのランチを食べていたら、


私の隣にコトンとトレーが置かれた。


「隣、いい?」


聞き慣れた声に、ハッと顔を向ける。


「霧島さん…」


「ここ、眺めがいいな。

めったに社食には来ないから、連れもいないんだ。

いいかな?」


人懐こい笑顔の彼に、どうぞとぶっきらぼうに答えた。


別に私の席じゃないし、


好きなところに座ればいいんじゃない?
< 132 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop