心を全部奪って
ショップをブラブラしていたら、いつの間にか空が真っ暗になっていて。


私は観覧車への道を、のんびり歩いていた。


海から吹く風が、とても心地良い。


私の生まれた町はわりと海の近くだから。


潮の香りを嗅ぐと、なんだかふるさとを思い出してしまう。


思い出すと、ちょっと苦い気持ちにはなるけれど。




しばらく歩いていたら、観覧車に並ぶ人の列が見えて来た。


さすがは金曜日の夜。


カップルでいっぱいだ。


こんななか一人で観覧車に乗るなんて、


ちょっぴり寂しいかも。


でも、一人にはもう慣れっこだ。


だって、工藤さんとはどうやったって


こんなところには来られないんだから。


観覧車かぁ…。


いつぐらいぶりだろう?


大学の頃、友達と行った遊園地以来かな?


そんなことを思いながら、観覧車の列の一番後ろに並んだ。


私の目の前の大きな大きな観覧車。


ライトアップされていて、とても綺麗だ。


その時だった。




「朝倉…?」




まさかの声に、耳を疑った。

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