心を全部奪って
「と、とにかく。

部屋はダメだから!

ファミレスとかどう?

俺、離れた席で見ててもいいけど?」


「あー…。

それは、すごくありがたいけど…。

工藤さんとは、

そういう場所で会うわけにはいかないから…」


なんだか心配そうな霧島君。


「きっと大丈夫。

ちゃんと言えるから…」


私がそう言うと、霧島君が優しい目で笑った。


「すげー…嬉しいよ。

別れる決心してくれて…。

俺、朝倉が寂しくないように、ずっとそばにいてやるから…。

泣きたかったら、いくらでも泣かせてやるから。

だから…」


そう言いながら、テーブルの上に置いていた私の手をそっと握る霧島君。


「安心して別れて来い。

全てのことが終わったら、アイツの事なんか考えるヒマもないくらい、色んなところへ連れてってやるから。

これから暑くなるしさ、

星を見に行ったり、キャンプもしよう。

旅行なんかもいいかもな…」


「うん、そうだね…」


そうやって少しずつ…、


私はきっと、


彼に惹かれていくんだろう。


そして、


工藤さんを


忘れていくんだろう……。

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