心を全部奪って
決心
淡く、温かみのある照明。


しっとりと落ち着いたジャズの調べ。


某高級ホテルのラウンジに20時。


座り心地の良いソファーに深く腰掛けて。


私は今、工藤さんを待っている。


ここは周りの人の顔も良く見えないし。


別々に来れば、会社の人に見られる心配はないだろうと思われた。


胸が、すごくドキドキする…。


大丈夫よ。


落ち着いて。


きっと言えるから。


工藤さんなら、わかってくれる。


ちゃんと綺麗に別れられるはずだから。


ノンアルコールのカシスオレンジを少し口にしたその時。


「お待たせ」


優しい声が耳に届いた。

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