心を全部奪って
「俺のために、別れようとしてくれてるんだろう?」


私はこくり頷いた。


「だとしたら、それは全然俺のためにならないよ。

俺のためを思うなら、

俺と一緒になって欲しい」


「工藤さんのためだけじゃないよ…。

自分のためにも…、そうした方がいいと思ったの…」


自分の…幸せのために…。


「だったら俺が、ひまりを幸せにしてあげる。

ひまりさえいてくれたら、俺は幸せだよ。

だから、ひまり…」


工藤さんが私の右手を、そっと両手で包み込む。


「俺と、一緒になろう…」


「工藤さん…」


「愛してる、ひまり…」


あぁ…。


信じられない…。


こんな日が来るなんて。


夢にも思ってなかったから…。


その時だった。


私のバッグの中で、


スマホのバイブがブルブルと鳴った。

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