心を全部奪って
〇×駅に到着して、私は霧島さんに肩を貸したままエスカレーターに乗った。


彼が後ろに倒れないように必死に支えて、ようやく地上に到着。


「ここから遠いんですか?

タクシー呼びます?」


「うーん。

僕のアパート、タクシー呼ぶほど遠くないんだ。

微妙なところだよ」


「じゃあ、歩きます?」


「う、ん。

頑張って歩く」


仕方なく、そのまま歩き始めた。


「ごめんね。

この埋め合わせは必ずするから。

っていうか、朝倉さんっていい人だよね」


「そんなこと、ないけど…」


だって、しょうがないよ。


なんだか、ほうっておけないんだもの。


私の肩に手を置いて、ヨタヨタと歩く霧島さん。


結構重くて歩きにくい。


近くてもタクシーを呼ぶべきだったと後悔した。


そうこうしているうちに、どうやら霧島さんのアパートに到着したみたいで。


「ここの2階なんだ」


2階かあ。


1階ならここで帰れたのに。


仕方なくそのまま彼を支えて階段を上った。

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