心を全部奪って
悲しい現実


それはもう、本当に呆気ない幕引きだった。


自宅待機を言い渡されたその日のうちに、私の処分が決定してしまった。


『キミ、このままの状態じゃ会社に居づらいだろう?

今後またこんなことがあっても困るしね。

自主退職ってことでいいかな?

それなら、経歴に傷もつかないでしょ?』


大沢部長は、電話の向こうで実に淡々と話していた。


最後に、すぐに退職願を郵送するよう言われた。


私はそれで決定したけど。


工藤さんの処分は、一体どうなったんだろう。


降格?減給?


確かめようにも確かめられない。


私物は一切置いていないから、もうあの会社に足を踏み入れる用事もないし。


行ったところで、惨めな思いをするだけだ。


一年未満しか働いていないから、退職金の対象でもないし。


自己都合退職と同じ扱いだから、失業保険がもらえるのも随分先。


なんだか、やりきれなかった。

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