心を全部奪って
強い日差しがアスファルトに照りつけるなか、私はトボトボとオフィス街を歩いていた。


『処分が決定したら、連絡するから』


部長はそう言ったけど、出勤停止ということは、もう立派な処分だよね。


これだけの大騒ぎになったんだから、当然なのかもしれないけど。


工藤さんにはさっきから何度も電話をかけているけど、全然出てくれない。


工藤さん…。


どうして


私が誘惑したって嘘をついたの?


どうして


奥さんが妊娠しているのに、別れるなんて言ったの?


どうして


一緒になろうなんて言ったの?


どうして


愛してるなんて言ったの…?



もう何もかも信じられない。



誰か、助けて…っ!



思わず地面にしゃがみ込んだ。



多くの人々が行き交う歩道で。



私はしばらく立ち上がることが出来なかった。

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