心を全部奪って
ニヤリと口角を上げて、



冷たく笑う彼。



あまりに冷たくて、



頭のてっぺんからつま先まで、



ゾクリと粟立った。



この人は、



誰…?




「よ、酔ってるんじゃなかったの…?」




震える声を絞り出した。



今さらながら心臓がバクバクし始めて苦しい。



「俺が、あの程度の酒で酔うかよ」



馬鹿にしたようにフッと鼻で笑う男。



じゃあ、



さっきまでの千鳥足は何だったの?



演技だったってことなの?



“俺”って…。



一人称も変わってるし…。



どうしよう。



怖い……。

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