心を全部奪って
それは、本当に一瞬の出来事だった。



柔道なんてやったことないけど。



華麗に一本取られる時って、多分これくらい早技なんだろうなって。



こんな状況なのに頭の片隅で思った。



背中にひんやり冷たいフローリング。



目の前には、



私に覆い被さる霧島さん。



何がなんだかワケがわからずに、



ただ



部屋の天井だけを見ていた。





「なぁ」





霧島さんにしては低い声。




ドキッとしつつ、私を見下ろす彼に視線を移した。




そこには、



酔ってつらそうにしていた彼は、



もうどこにもいなかった。




「無事に帰れるとでも思ったの?」




「え…?」




どういう…意味……?





「男の部屋に来て、



本気で何もされないと思った?」

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