心を全部奪って
「そうだな…。

お前なら出来るよな」


低い声で、日高に詰め寄った。


「システムの梶原ってヤツ。

お前に憧れてるもんな」


日高が少しずつ、後ずさりする。


それを追うように、俺は一歩二歩と間合いを詰めた。


梶原は、見た目は冴えないオタク野郎だけど、そのテの知識はものすごいんだ。


「どうやってアイツを買収した?


金でも渡した?


デートでもしてやった?


いや、


それくらいじゃアイツは動かないよな。


そんなリスクの高いこと…」


「やめてよ…」


「もしかして…、



自分を売った?」


「拓海!」


日高の目に涙が滲んでいく。


「お前…。

さっき朝倉のことを汚らわしいって言ったよな?」


「だから何?

だって、実際そうじゃない!」


「黙れ!」


俺は日高を追い詰めて、壁にドンッと右手を置いた。

< 285 / 370 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop