心を全部奪って
キミのもとへ
いつも通勤で使う地下鉄。


ラッシュ時は混雑しているけれど、昼間はそこそこ空席が見られる。


だけど、落ち着いて座ってなんかいられなかった。




駅に到着すると、今度はひたすら朝倉のアパートを目指して走った。


容赦なく照りつける日射し、アスファルトからモワモワと沸く熱気。


女っていいよな。


スカートとか涼しげだし、日傘で頭をガードできるんだから。


男はスーツにキャップ帽を被るわけにもいかないし、結構過酷だ。


そんなことを思いながら走っていたら、朝倉のアパートが見えて来た。


そこから出て来る一台のトラック。


すれ違う時にチラリと見ると、トラックのサイドパネルにでかでかと“引越”の文字が。


まさか今のって


朝倉の荷物?


「やべぇ!」


俺はアパートの階段を一気に駆け上がった。

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