心を全部奪って
俺の部屋にゴトンとトランクを入れる。


朝倉はどうしていいかわからないみたいで、玄関で立ち尽くしていた。


「あのさ」


「ん?」


「俺、今から仕事行って来るけど。

絶対勝手にいなくなるなよ?

か、鍵渡しておくから。

言っとくけど、スペアないからな。

ポストに入れて帰るなよ?

そんなことされたら俺、部屋に帰れなくて困るんだから。

そこんとこ、よろしくな」


思わず早口でまくしたてていた。


スペアくらい、本当はあるんだけど。


そんなことは秘密だ。


「大丈夫だよ。

ちゃんと待ってるから」


静かに呟く朝倉。


「そ、そか。

ならいいんだけど…」


落ち着いた口調で言われて、なんだか恥ずかしい。


ドキドキしているのは、所詮俺だけってことか…。

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