心を全部奪って
「あんたのアパートから、そう遠くないだろう?

好きな時に行けばいい。

ナオトなら、優しく出迎えてくれるはずだから…」


「え、いいの…?」


「いいに決まってんじゃん。

俺の紹介なら、もうあの店の常連だよ」


そう言ってにっこり笑う霧島さん。


思わず、歩いていた足を止めた。


「ど、どうして…?」


「ん?」


「どうして、親切にしてくれるの…?」


「え…?」


「奴隷になれって言われたけど。

でも、霧島さんのしていることって。

全部私のためのように感じるの。

違う…?」


夜景を見せてくれたり。


運動させてくれたり。


海を見せてくれたり。


大事な仲間に会わせてくれたり。


ハッキリ言って、霧島さんのメリットになるようなものは何もない。


お酒だって本当は強くないのに。


どうして強いなんて嘘をついたの?


何を考えているの…?


知りたい…。


どうしても知りたい…!

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