心を全部奪って
「別に、あんたのためじゃねーよ」


急に低い声になる霧島さん。


「俺がそうしたいから、そうしてる」


「で、でも…」


何のメリットもないでしょう?


「現に俺、今からあんたを部屋に連れ込もうと思ってるし…」


「え…?」


「今20時半だし、あんたはもう家に帰りたいだろうけど。

でも俺は帰さない気でいる。

ひでーだろ?

俺はそういう勝手なヤツだよ」


どうして…?


絶対違う。


この人は、ひどい人なんかじゃない。


「いいか?

拒否権はないから。

黙ってついてきて…」


そう言って、私の手を引いて歩き始める霧島さん。


戸惑いつつも、なんだか抵抗する気にはなれなかった。


ちょっと前の私なら、何をされるか怖くて、絶対行きたくなかっただろうと思うけど。


でも、今は違う。


どうしてだかわからないけど。


この人をもっと知りたいと


そう


思い始めていた。

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