28才の初恋
「このお礼は、今度オゴる時にたっぷりするからねっ!」

 私がそう告げると、同時にタクシーのドアが閉まる。窓の向こう側で大樹クンが「は、ハイ!」と返事するのが聞こえた。
 
 走り出すタクシー。
 車内で、今晩の幸せな奇跡にため息を吐く。

「くぅぅ……大樹クン! 大好きよぉぉおおおお!!!」

 タクシーの中というのを忘れて、素直な気持ちを絶叫してしまう。
 幸せ過ぎて、恥ずかしいという気持ちが吹っ飛んでしまっていた――。

 運転手さんの「どちらまで?」という言葉は私の絶叫に掻き消されていた。
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