28才の初恋
 大樹クンはまだ呆然としている。
 オフィスはようやく一拍の間を置いて時間を取り戻し、それでもなおざわついた空気に支配されていた。
 
 周囲の全てが、私と……大樹クンの次の行動を待っていた。

「な、何をボーっとしてるの! は、早く行動に移りなさいよっ!!」

 身動きの取れない大樹クンを再び怒鳴りつけた。
 可愛い女になりたいと思う気持ちとは裏腹に……ドンドン怖い女上司のような行動を取ってしまう自分が非常に悲しい。

「――は、ハイ! 行って来ます!!」

 だが、私の二回に渡る絶叫によって、大樹クンはどうにか行動に移るだけの気力を取り戻してくれたようだった。
 スッと振り返り、慌ただしく準備を整えてドアから駆け出して行った。

……頑張れ!!大樹クン!!!
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