28才の初恋
第4章『接待イズム』

4-1

 今日は朝から気分が重いような、浮かれているような……。
 複雑も複雑、頭の中にある回路がショートしそうな気分である。

 というのも今日は、先日、大樹クンがミスをしてしまった取引先、『恒久ハンドショップ』に私も一緒に訪問するのだ。
 大樹クンと一緒に外出……は気分がウキウキものなのだが。
 それでも目的が取引先への謝罪、さすがに気分は重い。

 『恒久』の桃代部長とは午前十時に面会する約束を取り付けていた。

 『今さらお話できることもあるとは思わないけどね』、約束を取り付けた電話の切り際にそう呟いたことからして……まだ桃代部長の怒りは解けていないことが窺える。
 それゆえに……さすがに大樹クンと二人で訪問するとはいえ、気分は非常に重い。

 今日は毎朝のメールチェックするのもそこそこに、朝礼が終わるのを見届けて、すぐに外出する準備を整える。
 時計は九時を過ぎたところを指しているが、今日の訪問だけは絶対に遅刻は許されない。
 万が一、渋滞に巻き込まれるなどの事態も予測すれば、この時間には出発しておくべきなのだ。

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