28才の初恋
 そんな気持ちなので、素直に大樹クンを励ます言葉が出てこない。

 大樹クンの現在の格好は、店を出るときに女どもにしがみつかれた為にスーツはヨレヨレ、髪もボッサボサになっている。
 ワイシャツには何個もキスマークが付けられていて、それが再び私の嫉妬心を煽る。

「ふう……まったく……」

 そう口に出すのが精一杯だった。

 モテるであろうとは思っていたが、まさかここまでモテてくれるとは……我ながら厄介な相手に恋してしまったものだ。
 しかも、その相手は自分の部下で年下。
 障害は山積みである。

 そんな障害に比べれば……桃代部長の機嫌を取ることなんて簡単なことに思えてきた。
 それと同時に、今まで必死になっていた自分に笑いがこみ上げてきた。

「ふ……ふ、あははははは!!」

――何だかおかしくて笑いが止まらない。
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