28才の初恋
 大樹クンが不思議なモノを見る目で私を見ている。それでも笑いを止めることが出来なかった。

 完全に怒らせてしまった取引先の上司、その機嫌を戻す事よりも、よほど障害が多い恋に落ちてしまっているのに……私は全然この恋を諦める気持ちなってコレっぽっちも無いことを自覚してしまったからだ。

――なんだ、コレに比べれば……他の事なんて大したことじゃないように感じるじゃない。

 チグハグな自分の行動に笑いが止まらない。
 そんな私の様子に、どうして良いか分からずに大樹クンがオロオロしている。
 こんな姿も可愛いなあ。

「か、課長……?」
「アハハ……何でもないのよ」

 心配する大樹クンの肩に手を置いて、何とか止まらない笑いを抑えようとする。
 障害は多い恋ではあるが……手を伸ばせば触れるほどに近くに居る相手なのだ。
 
――可能性はゼロではない。
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