28才の初恋
 いや、様子がおかしいなんてもんじゃない。
 ヒジ打ちをかましてしまった体勢のまま……というか、桃代部長が私のヒジをガッチリとキープしてる?

 この異常な事態に、テーブルに座る誰も身動きが取れない。
 かくいう私も、あまりの事態に身動きが取れない。
 桃代部長が、私のヒジの下でモゾモゾと動いているのが気持ち悪いぞ?

「も、もっと……ハッ!」

 二度目の『もっと』発言をして、やっと桃代部長が我に返ったようだ。
 ようやく私のヒジを解放してくれた。

 その動きで、他の皆もようやく時間を取り戻した。
 場を取り繕うように、各自に咳払いをしてみせたり、意味なく笑っていたり。
 私たちのテーブルが、私が罵倒されていた時とはまた違う異様な空気に包まれている。

――少しの間、微妙な沈黙がこの場に漂う。
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