28才の初恋
 雑踏の中、横を歩く大樹クン。
 身長は私よりもずっと高くて、私の頭のてっぺんぐらいの場所に大樹クンの肩があって……視線を少し下にずらせば、大樹クンの大きな手がそこに在る。

 ゴクッ!
 その手を見て、私はツバを飲み込んだ。
 手を握って……振り払われたらどうしよう?
 急にそんな不安が襲ってくる。

 大樹クンから見れば、私は『憧れの人』であっても上司なわけで……むしろ、上司として憧れられているだけの可能性も……というかその可能性が極めて高いわけで。

 そんな不安を抱えつつも……思い切って大樹クンの手を一気にギュッと握った!!

――振り払われちゃう!?

 そう思って、手を握った瞬間に自分の目をギュッと固くつぶる。
 一瞬の後、恐る恐る目を開くと……私の手は大樹クンに強く握り返されていた。
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