28才の初恋
「今は……まだ。もう少し……待ってください」

 視線は前を向いたままだ。
 その姿は、私に告げるようにも見えるし、自分に誓うようにも見えた。
 そのどちらかは分からないけど……私は小さく「ウン……」と呟き返した。

 四月の夜、街に吹く風はまだ頬に少し冷たい。
 でも、手に伝わる大樹クンの体温は暖かい。

――気が付くと……私は握った手をブンブンと振り回していた。

 こんな幸せな気分、人生で初めてだ!
< 222 / 518 >

この作品をシェア

pagetop