28才の初恋
 実際にはそんなことは無くても、沈黙というのは時間を長く感じさせる効果があるようで。

 他のテーブルから聞こえるガヤガヤという雑音がやたらと良く聞こえて来る。

 このご時勢に、猛しく『一気コール』なんてものをしているグループや、『このソーセージよりはアナタの方が小さいわね』みたいな下ネタをしている隣の席に座っている同性のカップルの会話など。
 なまじ自分が無言であるためか、聞きたくなくとも勝手に耳に飛び込んで来る。

――ああ、そろそろ私が無言に耐え切れなくなる!!

 多少なら古傷をエグることになっても仕方ない。
 この沈黙というものは重すぎる!
 私の精神の限界値を沈黙時間が上回りかけた瞬間……大樹クンが顔を上げた。

 その行動で、どうにか自分から無茶な話題を切り出すことを思い止まることに成功した。
 しかし、まだ大樹クンの表情は固いままである……何があったのだろうか?
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