28才の初恋

6-4

「その……タバコ吸っても良いですかね?」

 大樹クンが遠慮気味な顔と声でそう聞いてきた。
 そういえば、この店は禁煙ではないのに、私と飲み始めてから大樹クンは一切タバコを吸っていなかった。
 私に遠慮してくれていたのだろうか……?

 いや、確かに私はタバコを吸わない。

 副流煙を吸わされるのも、出来れば御免被りたい。
 街中で無神経に歩きタバコをしている人間に煙を吹きかけられたら、背後から延髄蹴りを喰らわせてやりたい、と思うことだって多々ある。

 しかし、タバコを吸っている相手が大樹クンというのならば話は全然別だ。
 ガンガン吸ってくれて構わないし。
 むしろ吐いた煙を全て私が吸い込んでしまいた。
 大樹クンが吐いた、唾液の粒子が混ざった煙……そう考えるだけで、煙を吸って肺ガンになったとしても本望だと思える。
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