28才の初恋
 しかし、その一言で大樹クンの中で膠着状態が少し緩んだようで。
 まだ何も話さないが、ビールのジョッキを掴んで飲む行為を再開させた。
 
――そういう意味では……ホモカップルに礼を言っておくか。

 ビールを二、三回飲んだ後、大樹クンは少しずつその重い口を開き出した。

「その……今まで女性と接したことが無くて。どうすれば良いのかも分からないんですよね」

 大樹クンの話はこういうことだった――。

 何でも、小学校の頃から私立に通っていた大樹クン。
 その学校が男子校で、しかも小学校から高校までのエスカレーター式。
 殆ど女性らしい女性と接することが無かったそうで。

 大学に進んでからは、多少は女の子と接する機会もあるかと思っていたら入ったのが理学部の数学科。女の子は皆無の学部だったそうで。
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