28才の初恋
 大樹クンの額に当たってしまわないように……自分の前髪をそっとかき上げる。
 そのまま自分の上体を起こして、眠っている大樹クンに覆い被さるような体勢に。

――うわ!私って、スゴく悪いことしてない?

 眠っている人間を相手に……しかも、そのファーストキスを奪おうとしている。
 少し罪悪感が起こり、唇が触れる寸前に自分の顔を止める。
 大樹クンの寝息が……私の頬を撫でる。

――ああ、エエ香りや……。

 その香りに、陶然となりかける。
 それと同時に、どうにか思い止まっていた理性は崩壊寸前まで追い込まれている。

――ごめんね……。

 心の中でもう一度謝りつつ、再び大樹クンの顔に自分の顔を近づけた瞬間……大樹クンの手を握った私の手が……いきなり握り締められた!
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