28才の初恋
――ひょっとして、私を避けるために旅行をキャンセルするつもり……?

 思い切りネガティブな考えが頭をよぎる。
 まさかとは思うのだが……ここ最近の大樹クンの態度を見ていると、あながち可能性がゼロだとは言い難い。

 周りのみんなが楽しげな雰囲気で居るなか、私だけがやたらと不安そうな顔で立ち尽くしている。

「課長ぉ、どうしたんですかぁ?」

 私の表情に気が付いてしまったのだろう。
 小島が私の傍に寄って来て、そう尋ねてきた。

 正直に答えたものか……一瞬、返事をするのに悩む。
 大樹クンが遅れているとはいえ、電車の発車までは後二十五分もある。

 社会人の旅行ならば、これくらいの遅刻は往々にしてあるものだ。
 いかに引率の責任者であるとはいえ、それしきの事で心配するのは――どう見ても不自然だ。
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