28才の初恋
「え? あ、うん……」

 誰か分からないので、かなり曖昧に返事をしてみる。
 こういう時って厄介だよね。
 相手は自分を知ってるのに、自分が相手を全く分からない。

 隣の人物は身体を洗っている。
 なかなか見事なスタイルで、胸の肉に乏しく、尻の肉がやや豊富な私としては、この隣で身体を洗う人物の胸を軽くエグってやりたい……と思うが、やはり見覚えがない。

 私のことを『課長』と呼んだところをみると、取引先の人か?
 いや、でもこんな顔の人を見たことがない。

「もぉ、電車に乗ってないから心配したんですよぉ」

 え?何でその私が犯した恥を知っているの?ひょっとして、ウチの会社の関係者?
 隣の人の顔をジーっと見てみる。
 目の大きい童顔に、アタマの中で化粧を施してみる……ああっ!!小島!!!
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