28才の初恋
 もしも普段の私であれば、このスマッシュで勝負は付いていただろう。

 だが、『ゾーン』に入った私にとって、どのような球であろうともスローモーションに見える。
 絶対の自信を持って打った球を打ち返され、小島の顔が愕然としていた。

――これで同点。

 まだゾーンは続いている。
 危ない戦いであったが……もう私の勝利は動かない!!

 サーブはもう一度、小島からの順番だ。
 どんな球でも……絶対に打ち返す!
 必勝の信念に裏打ちされた、絶対的な集中力である。
 何があっても、崩されることは無い。

――そろそろ小島が打ってくるか?

 と、思いながら待っていると……小島の顔がニコッと笑った。
 私に何か弱点を発見したのか?

……勝負の間なのに、小島が話しかけてきた。
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