28才の初恋
「とりあえずぅ、もう一回お風呂に入りましょ。顔がベタベタですよぉ」

 小島に促され、今度は露天風呂に向かうことにした。
 言われてみれば、せっかく一度お風呂に入っていたのに、卓球をして汗だくだし、泣いてしまって顔もベタベタになるしで。
 とてもではないけれど人様に見せられた顔では無くなっていた。

 ひとしきり泣いたことで、幾分か気持ちもスッキリして、小島を伴って露天風呂に向かう。

 脱衣所で服を脱ぐ間に、小島に私が泣いたことを他言無用と釘を刺しておく。

「ヘヘヘ、分かってますよぉ。可愛いんだからぁ」

 と、本当に分かっているんだか、分かっていないんだか。そんな返事である。
 ただ、そう答える小島の表情は、いつもの部下である小島の顔に戻っていた。

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