28才の初恋
 ヤケクソに近い勢いで乾杯の音頭を取る。

 私から見て斜め前に座る師匠が『ヤレヤレ』といった表情でこちらを見ている。
 私がショボンとした表情で師匠を見返すと、師匠は片手でビール瓶を持ち、大樹クンの方を指差した。

――ビール瓶、コップ……注ぐ。

 なるほど!!
 ビールを注ぐことを口実に大樹クンの隣をゲットしろってことですね、師匠!!

 そうと決まれば――私はお膳の上に乗っている宴会料理を一気に食べ始める。

 社会的に見て、目下の人間の場合は、宴会がほどほど盛り上がったら適当に上司のところへ酒を注ぎに行くのが自然な行動だが……残念ながら私はこの場で一番役職が上の人間だ。

 料理をあらかた食べ終わったので、部下とコミュニケーションを取るために部下に酒を注いで歩いている、というポーズを取る必要がある。
 幸い、順番で言えば大樹クンの酒を注ぎに行くのは最後……そこで居座ってやる!!
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