28才の初恋
「磯野くん、池田くんはどうしたの?」

 向かいに座っている磯野に、大樹クンが居ない理由を聞いてみる。
 同室の磯野なら、何か知っているかと思ったからだ。と、同時に磯野が昨日の騒動を知っているのかどうか、探りを入れようという意図も混じっている。

 同室の磯野も知らなければ、大樹クンがどの男子社員にも昨日の一件を話していないだろう、という予測が成り立つ。

「ああ、アイツ昨日の夜に長湯してノボせたらしくて。まだ布団で寝てますよ。何かアイツに用でもあったんですか?」

 どうやら、大樹クンは磯野にも何も話していないようだ。
 そこは安心したのだが……別の不安が湧いてくる。
 ひょっとして、大樹クン……また私を避けだしたのではないだろうか?
 だから、この朝食の場所に姿を現さないのでは……一歩進んで、一歩退がったような気分である。
< 448 / 518 >

この作品をシェア

pagetop