28才の初恋
『次はぁー、新宿。新宿です』

 幸福に浸っている時間ってのは本当に早く過ぎてしまうようで。
 顔を大樹クンの胸に埋めていられるタイムの終わりを告げるアナウンスが無情にも車内に響いた。

(チッ!)

と、心の中で舌打ちをしてみるが、それでも電車は止まらない。止まってくれるハズもない。
 少しずつ減速を始め、低く唸るような音を残して電車は止まってしまう……。

『新宿―、新宿です。お忘れ物の無いようにお降りください』

「ふう……!」

 扉が開くと同時に、電車から急いで降りる私たち。
 ホームに降り立つと同時に大樹クンから安堵のため息のような声が漏れた。


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