28才の初恋
「満員電車はキツい……ですよね」

 大樹クンが少し苦しそうな顔で、それでも爽やかに微笑みながら私に向かって言う。
 その表情と声に……胸がキュンっとなる。

 この美味しい状況に――私の中に在った『上司モード』は――あっさりと敗北を喫した。

 電車の揺れに身体を持って行かれたフリをして、自分の身体をピッタリと大樹クンの胸に埋める。

――ああ、エエ匂いやわぁ……。

 大樹クンが身に付けているのだろうか、シトラス系の匂いが鼻腔をくすぐる。
 ウン。もうアドバイスとかは会社に着いてからで良いよ……この時間は貴重だよ!!
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