28才の初恋
 昼休みまでに少しでも仕事を片付けておこう。そんなことを考えながらデスクにしがみ付いていると、誰かがデスクの前に立った。

 話しかけてこないので、そのまま仕事を続行する。
 どうせ橋本あたりが追加の仕事を持ってきたのだろう。こちらが声を掛けなくても、きっと自分から『課長、この書類をお願いします』とか言ってくるに違いない。

「課長ぉ、ちょーっと良いですかぁ?」

 頭上から響いた声は……小島だった。
 顔を上げるとニコニコと笑った小島が私の真ん前に立っている。この忙しい時に……何の用事があるというのだろうか?
 顔をデスクに向け、その体勢で小島の話を聞く。
 残業を短くするためにも、一秒だって無駄にしたくはないのだ。

「あのですねー……」
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