気づけばキミと恋に落ちて
「あぁ、お会計なんですが。今回は結構です」
「え、いやでも」
「いえ。今回はウチのスタッフの勝手な行動で、ご迷惑をおかけしましたので」


思いがけない言葉に、やっさんは「参ったなぁ」と、頭をポリポリと掻いた。


わたしも驚いたけど、確かに勝手な行動だったよね。


でも、こうして服を買ってもらってるわけで…。


だからってわたしが、〝いいよ、そう言ってるんだし。帰ろう?〟なんて、言えるワケもなく。


ただ二人の様子を見守ることしか、できなかった。


「お客様、たまにコチラご利用されてますよね?」
「え?あー、はい。会社からも近いので、ストレスが溜まった時なんか一人でフラッと来てますね」


そう言ったやっさんに、拓篤はニコリと笑った。


「ですよね?じゃあ、これからもご利用してくださいとのイミも含めて今回は、このまま…。これ限りで来てくれなくなることのほうがコチラとしても、ね。だから今回の、お代は結構ですので」
「えっと……。そこまで言われるとなぁ…。じゃあ、店長さんのご厚意に甘えることにしようかな?」


さすがに、やっさんもそこまで言われちゃうと困ったようで、拓篤の言ったことを、のむことにしたらしい。


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