セカイカクメイ
第二章


「だるい」
生徒会に入ってからというもの、学校生活において落ち着ける時など皆無。家に帰れば夢兎が五月蝿いし、俺の平穏な日常は何処へ行ったのか。
「あんた思ったより鈍感なのね」
「は?」
「この前生徒会室に無理矢理あんたを連れ込んだ女、あれ多分妖だよ」
「は???」
「同族の識別も出来ないでよく生き残れたね…」
「そのウザさでよくカミサマ出来たな」
「てか真面目にさ、あいつ、あんたに何するかわかんないよ?」
「同属嫌悪ってやつか?縄張り争いでもすんのかよ」
確かに俺はここらの奴等から見れば完全に他所者なんだろう。此処に来たのは去年の神無月だし、好き勝手やっているのは事実だ。だからと言って特に周囲を害するような行為はしていないし、なにか気に食わないというなら縄張りがどうのとかだろう。
「あんたを不幸にする為にわざわざ来たんじゃないんだからね。普通の存在になってもらわなきゃなんないんだからさ」
「普通か。良く言うよ。どう考えたって俺は元が普通じゃねぇのに。なれるわけないだろ」
「願えばいいのに」
「なれないと確定しているのに、何故願うんだ」
「叶う叶わないじゃない。願うことに意味があるのに。願うことで意味が生まれる。願うことが存在の証明。全ての存在は私がいる限り願い続ける。存在意義さえ持てば、あとはその存在は願いが叶うのを待つだけ」
そう語る奴の目は、明らかに今までとは違う。何だろうか。不確かな何かを好奇心で覆い尽くし、撫でるように見つめるかのような、不思議な眼。
幼い少女の無邪気で純粋な、眼。
「この世界にいる存在は待つ事を無意識化し、自ら夢を叶えようとする、全ての世界においてたった一つの存在。全てが必ず何かを求める。
でも、あなたは何も求めていない。それではこの世界の摂理に違(たが)う」
奴の言っていることが分からなかった。俺は一体どういう状況に置かれている?
「その世界の摂理に背く存在は、その世界には必要無い。そうなれば消えるしかない。…でもあんたは消えてないんだ。理由は分からないけど、それはあんたが〝それ以外の意味〟を持つ存在だから」
「…は…?…どういうことだよ…」
「私は、あなたが〝それ以外の意味〟を願わせる為に来たの。〝それ以外の意味〟なんて、私に分かるわけ無いじゃん。だから、一緒に見つけようよ。あんたの特別な〝存在意味〟を」


「―――あぁ、確認した。やはりそうだったようだ。………分かった。一刻も早く実行する。…出来れば応援が欲しい。……また700年前の様にはさせないぞ」



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