帰ってきたライオン

おっと、やばいやばい。そんな思い出を悠長に思い出してる場合じゃない。
さっさとごはん食べに行かなくては店が閉まる。

セキュリティーカードをぴぴっと鳴らし、ドアをすり抜けエレベーターホールに出る。

この時間になるとだーれもいない。
いるのはどっかの(禿げた)課長とか(たぬきのような腹の)部長とか……なんかそんなのばっか。

天気いいなぁ。
こんな天気の日には仕事なんてしないでぱーっとやりたいな。ピクニックとか行って昼からバーベキューとかいいよね。

都内では手ぶらてバーべなんてイベントもあるくらいだ。
財布だけ持って行くのはビルの屋上。

そこには肉から野菜からビールから全て用意されているのであとはそれらを焼けばいいだけのお手軽プラン。
って、やっぱ私はダメか。でも思うだけならいいよね。



『そういえばさ、海外営業部に来た彼、見た?』

『見た見た、かなりかっこいいよね。彼女いるのかなあ』

『でも絶対会えないよね』

『だよね、だって彼、ちゃんと12時にお昼に出るし18時には帰っちゃうっていうじゃん』

『ほんと、残業でもしてくれたらいいのに。できる人は定時上がりってこと?』

なんですと?
定時に上がるなんて、なんて奴!
このくっそ忙しいときに、くっっっそー。

きっとあれだな、そいつが取ってきた仕事の入力もこっちに回ってくるんだろうな。

そういや来週から仕事増えるから覚悟しててねとかって神谷さん言ってたっけ。

おお、ってことはだ、これに便乗して上田さんを叩けば仕事早く終わるってこと?

たぶん彼女が言っていたのはこの彼のことだろう。
残業したら会えないんだったらきっと彼女も頑張るだろう。

(という希望的観測)

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